「本当はどうしたいの?」と聞かれて、
困った記憶がありませんでした。
そもそも、自分の中に
「これがしたい」「これが好き」
という強い希望がある感覚が、
あまりなかったからです。
相手の提案に大きな抵抗がなければ、それでいい。
昔の私は、そう思っていました。
だから当時は、
本音が後回しになっていることにも、
気づいていなかったのだと思います。
今回は、そんな
「気づかないまま本音が引っ込んでしまう」現象が、
なぜ起きるのかを、構造の視点から整理してみます。
気づいたら“相手の意見に寄っている”日がある
ショッピングで、
会議で、
友人とのご飯で。
自分の好みとは違う方を自然と選んでしまったり、
場の空気が丸く収まる答えを言ってしまったり。
こうした現象は“優しさ”や“八方美人”ではなく、
もっと構造的な理由があります。
なぜ本音が消えるのか?
理由はとてもシンプルです。
相手の気配・感情・期待という“強い刺激”が、
自分の本音という“弱い声”を
かき消してしまうからです。
共感体質は、相手の気持ちや場の空気を
“強い刺激”として受け取りやすく、
本音が後方に追いやられてしまいます。
本音が消える“3段階プロセス”
- 相手の気配・意図を察知
表情や声のトーンから、
相手の状態を瞬時に読み取ります。 - 相手にとって最適な言動を自動生成
「こう言えば丸く収まる」という答えが
頭の中で自動生成されます。 - 自分の欲求が後回しになる
その結果、自分の声は脳内会議で発言権を失い、
本音が行方不明になります。
本音を取り戻すための“小さな技”
本音はその場で瞬時に出すものではなく、
いったん外に出してから見えてくるものだと
そう感じています。
ここでは、具体例を交えながら
本音との距離を取り戻す方法を紹介します。
① その場で即答しない(持ち帰る)
例えば、友人に
「旅行どこ行きたい?」と聞かれたとします。
本音迷子が起きやすい場面です。
そこであえて、
「ちょっと考えたいから、明日返すね」
と“時間”をつくります。
この一拍が、本音が呼吸できる余白になります。
② 書き出してみる
旅行先のことを、
思いつくままに外へ出していきます。
【気持ちとしての本音】
・海が見たい
・温泉に入りたい
・のんびりしたい
・移動は短めがいい
【現実的な本音(条件)】
・予算〇円まで
・休みが1日だけ
・遠出は翌日に響く
ここで大事なのは、予算やスケジュールも
“立派な本音の一部”だということです。
現実と気持ちの両方がそろって、
初めて「自分の本音」になります。
③ “本音っぽい建前”も書き出す
本音迷子が起きる最大の原因は、
この“本音っぽい建前”が混ざることです。
見た目は本音に近いのに、
実は他者基準で選んでいることがあります。
- 「以前Aが“北海道行きたい”って言ってたし
……北海道もいいかも?」
→ 自分の願望に見えるけれど、
“Aが喜ぶ”が主語になっています。 - 「Bが最近忙しそうだし、
近場の方が迷惑かけないかな?」
→ 気遣いが主語で、本音ではありません。 - 「インスタ的には京都が映えるよね」
→ SNSフィルターによる判断。 - 「みんなが行きたいところが無難かも」
→ “揉めない”を優先した建前。
こうして見ると、
“本音の仮面をかぶった建前”が
いかに紛れやすいかがわかります。
④ AIに仕分けしてもらう
AIは、本音と建前の混線をほどくのが得意です。
例えばこんなふうに投げてみます。
旅行の希望を書き出しました。
「自分の本音」「条件としての本音」「本音っぽい建前」に分けて整理してください。
するとAIは淡々と仕分けしてくれます。
【自分の本音】
・海
・温泉
・のんびり
・短い移動
【条件としての本音】
・予算
・休日日数
・体力
【本音っぽい建前】
・Aの希望
・Bへの気遣い
・SNS映え
・無難さ
この瞬間、
「あっ、私が本音だと思っていたもの、
ほぼ建前だった……」
という気づきが訪れます。
⑤ ①〜④を繰り返すことで“本音筋”が鍛えられる
本音は筋肉のように、使うほど反応が早くなります。
繰り返していると、
少しずつ“本音が聞こえる日”が増えていきます。
おわりに
本音が行方不明になるのは、
性格の問題ではなく脳の構造です。
強い刺激(相手)に弱い声(自分)が負けるのは
自然なこと。
だからこそ、距離をつくり、書き出し、AIに整理を頼むなど、工夫が必要なのです。
本音は丁寧に扱えば必ず戻ってきます。
その積み重ねが、
“自分の声と仲良くなるための第一歩”だと思っています。