#27“本音が行方不明になる日”の仕組み

「本当はどうしたいの?」と聞かれて、
困った記憶がありませんでした。

そもそも、自分の中に
「これがしたい」「これが好き」
という強い希望がある感覚が、
あまりなかったからです。

相手の提案に大きな抵抗がなければ、それでいい。
昔の私は、そう思っていました。

だから当時は、
本音が後回しになっていることにも、
気づいていなかったのだと思います。

今回は、そんな
「気づかないまま本音が引っ込んでしまう」現象が、
なぜ起きるのかを、構造の視点から整理してみます。


気づいたら“相手の意見に寄っている”日がある

ショッピングで、
会議で、
友人とのご飯で。

自分の好みとは違う方を自然と選んでしまったり、
場の空気が丸く収まる答えを言ってしまったり。

こうした現象は“優しさ”や“八方美人”ではなく、
もっと構造的な理由があります。

なぜ本音が消えるのか?

理由はとてもシンプルです。

相手の気配・感情・期待という“強い刺激”が、
自分の本音という“弱い声”を
かき消してしまうからです。

共感体質は、相手の気持ちや場の空気を
“強い刺激”として受け取りやすく、
本音が後方に追いやられてしまいます。

本音が消える“3段階プロセス”

  1. 相手の気配・意図を察知
    表情や声のトーンから、
    相手の状態を瞬時に読み取ります。
  2. 相手にとって最適な言動を自動生成
    「こう言えば丸く収まる」という答えが
    頭の中で自動生成されます。
  3. 自分の欲求が後回しになる
    その結果、自分の声は脳内会議で発言権を失い、
    本音が行方不明になります。

本音を取り戻すための“小さな技”

本音はその場で瞬時に出すものではなく、
いったん外に出してから見えてくるものだと
そう感じています。

ここでは、具体例を交えながら
本音との距離を取り戻す方法を紹介します。

① その場で即答しない(持ち帰る)

例えば、友人に
「旅行どこ行きたい?」と聞かれたとします。

本音迷子が起きやすい場面です。

そこであえて、
「ちょっと考えたいから、明日返すね」
と“時間”をつくります。

この一拍が、本音が呼吸できる余白になります。

② 書き出してみる

旅行先のことを、
思いつくままに外へ出していきます。

気持ちとしての本音
・海が見たい
・温泉に入りたい
・のんびりしたい
・移動は短めがいい

現実的な本音(条件)
・予算〇円まで
・休みが1日だけ
・遠出は翌日に響く

ここで大事なのは、予算やスケジュールも
“立派な本音の一部”だということです。

現実と気持ちの両方がそろって、
初めて「自分の本音」になります。

③ “本音っぽい建前”も書き出す

本音迷子が起きる最大の原因は、
この“本音っぽい建前”が混ざることです。
見た目は本音に近いのに、
実は他者基準で選んでいることがあります。

  • 「以前Aが“北海道行きたい”って言ってたし
     ……北海道もいいかも?」
    → 自分の願望に見えるけれど、
     “Aが喜ぶ”が主語になっています。
  • 「Bが最近忙しそうだし、
     近場の方が迷惑かけないかな?」
    → 気遣いが主語で、本音ではありません。
  • 「インスタ的には京都が映えるよね」
    → SNSフィルターによる判断。
  • 「みんなが行きたいところが無難かも」
    → “揉めない”を優先した建前。

こうして見ると、
“本音の仮面をかぶった建前”
いかに紛れやすいかがわかります。

④ AIに仕分けしてもらう

AIは、本音と建前の混線をほどくのが得意です。
例えばこんなふうに投げてみます。

旅行の希望を書き出しました。
「自分の本音」「条件としての本音」「本音っぽい建前」に分けて整理してください。

するとAIは淡々と仕分けしてくれます。

自分の本音
・海
・温泉
・のんびり
・短い移動

条件としての本音
・予算
・休日日数
・体力

本音っぽい建前
・Aの希望
・Bへの気遣い
・SNS映え
・無難さ

この瞬間、
「あっ、私が本音だと思っていたもの、
ほぼ建前だった……」
という気づきが訪れます。

⑤ ①〜④を繰り返すことで“本音筋”が鍛えられる

本音は筋肉のように、使うほど反応が早くなります。
繰り返していると、
少しずつ“本音が聞こえる日”が増えていきます。

おわりに

本音が行方不明になるのは、
性格の問題ではなく脳の構造です。

強い刺激(相手)に弱い声(自分)が負けるのは
自然なこと。

だからこそ、距離をつくり、書き出し、AIに整理を頼むなど、工夫が必要なのです。

本音は丁寧に扱えば必ず戻ってきます。
その積み重ねが、
“自分の声と仲良くなるための第一歩”だと思っています。