#C5 珈琲の時間

心地よさの琴線用のアイキャッチ画像

特別なカフェに行かなくても、
我が家には、
とっておきの時間がある。

手挽きのミルに、
コーヒー豆を入れる。

ガリ、ガリ、と
手に伝わる心地いい手応えと、
少しずつ部屋を満たしていく芳醇な香り。

お湯を注ぐとふっくらと粉が膨らみ、
丁寧な暮らしを、
少しだけ手中に収めたような
豊かな気持ちになっていく。

出来上がった一杯を、
お気に入りのカップに注ぐ。

すぐには口をつけない。

木彫りのカップとソーサー。
窓から柔らかく注がれる朝日。
手に伝わる木の温もり。
立ち上る香り。
器の佇まい。

「あぁ」

思わず溢れるため息。

コーヒーを味わう前のその空間ごと、
そっとかみしめる。

それから、静かに一口。

慌ただしい一日が始まる前の、
自分を取り戻すための、
大切で贅沢な余白。

おしまい。