この話は、
「読むつもり」で迎えられ、
「いつか読む」に分類された存在のぼやきです。
わたしは、
まだ一度も、
最初のページを開かれておりません。
積読本のぼやき「背表紙は、いつでも整えております」
わたしがこの家に来た日は、
ずいぶんと熱量がありました。
書店で手に取られ、
帯の言葉をじっと読まれ、
「今の自分に必要だと思って」と、
小さく頷かれました。
その日の夜には、
少し読むつもりだったようです。
机の上に置かれ、
しおりまで挟まれましたから。
ですが、
夜は案外、短いものでして。
わたしは、
いつの間にか本棚へ移動し、
背表紙だけを外に向ける役目を、
与えられました。
それからの日々、
ページは一度も開かれておりません。
それでも、
埃は払われますし、
背表紙の並びも、
時々、整えられます。
わたしを読む時間はなくても、
SNSをスクロールする指は、
どうやら止まらないようですね。
画面の向こうで、
新しい知識を集めているあいだ、
わたしは、
静かに棚を支えております。
もう、
悟っております。
わたしは、
読むための本ではなく、
勉強家であるように見せるための、
インテリアとして、
完成してしまったのだと。
時間だけが、
積もっているのです。
わたしの中身は、
手つかずのまま、
きれいに揃っております。
今日も積読本は、
背表紙を整えながら、
次の「いつか」を待っている。