あなたの服を守り続けて、
もう何年になるでしょう。
洗濯機という名の戦場に向かうたび、
わたしたち“洗濯ネット騎士団”は
静かに覚悟を決めます。
レアでも希少でもない、
どこにでもいる凡庸な存在。
それでも、
あなたの大切な布たちを傷つけまいと、
今日も私たちは盾となり、網となり、
影となって働いています。
栄誉も、名前も、昇格もありません。
ただ、任務だけが続いていく。
そんな“見えない働き手”のささやかなぼやきを、
どうか少しだけ聞いてください。
洗濯ネットのぼやき「あなたの服を守って早幾年、いまだ昇格の兆しはありません」
わたしたちは今日も、
薄暗い洗濯カゴの底で静かに出番を待っている。
ここは、わたしたち“洗濯ネット騎士団”の
控え室のような場所だ。
布団用の大柄な団員も、
繊細なブラ用の盾兵も、
軽いニットを任される小柄な隊士も、
扱いは皆同じ。
種類も役目も違えど、
人間からすれば、
まとめて「洗濯ネット」。
それで十分らしい。
……まぁ、慣れたけれど。
わたしたちが向かうのは、
洗濯機という名の戦場だ。
渦に巻かれ、叩かれ、揺さぶられながら、
あなたの服を守るのがわたしたちの務め。
どれだけ微細な糸くずが潜んでいようと、
どれだけ繊細な生地であろうと、
守るべき衣は守る。
ワイヤー入りだろうが、
目が細かかろうが、
ふわふわのクッションタイプだろうが、
扱いが変わることはない。
役目を果たすため、
ただ網を張り、
ただジッパーを閉じて、
静かに身を任せるのみだ。
あなたが大切にしているセーターも、
気まぐれで買った部屋着も、
ここを通るときは、わたしたちが守る。
それが、当たり前のように。
あなたは服の状態には敏感なのに、
わたしたちのことは、
ふだんほとんど気に留めない。
チャックが少しほつれてきても、
網が疲れてきても、
気づくのは「中身が飛び出したとき」ばかり。
新品のネットが補充された日には、
ちょっとしたざわめきが起きる。
「新入りか」
「あれは誰の担当だ」なんてね。
……まぁ、すぐに同じ扱いになるんだけど。
何十枚も持たれているというのに、
わたしたちは誰ひとり“レアキャラ”ではない。
昇格もなければ、席次もない。
在庫が増えても、特別扱いはされない。
――それでも、
あなたのために働くのが、わたしたちの仕事だ。
「昇格なし・報酬なし。それでも任務は続きます」
わたしたちの間では、
半ば合言葉のようなものだ。
名誉も称賛もない。
役目を果たしても、
誰かに気づかれることは滅多にない。
破れたときだけ
「あ、買わなきゃ」と呟かれる程度。
それでもね。
誰かの服を守って、
布を綺麗なまま戻す瞬間には、
確かに、小さな誇りが灯るんだ。
「当たり前だけど、有り難い存在」
あなたがそう思っていることを、
言葉にしなくても、わたしたちは知っている。
今日も洗濯ネットは、
静かな網目をそっと整えながら、
次の戦いを待っている。