特別なカフェに行かなくても、
我が家には、
とっておきの時間がある。
手挽きのミルに、
コーヒー豆を入れる。
ガリ、ガリ、と
手に伝わる心地いい手応えと、
少しずつ部屋を満たしていく芳醇な香り。
お湯を注ぐとふっくらと粉が膨らみ、
丁寧な暮らしを、
少しだけ手中に収めたような
豊かな気持ちになっていく。
出来上がった一杯を、
お気に入りのカップに注ぐ。
すぐには口をつけない。
木彫りのカップとソーサー。
窓から柔らかく注がれる朝日。
手に伝わる木の温もり。
立ち上る香り。
器の佇まい。
「あぁ」
思わず溢れるため息。
コーヒーを味わう前のその空間ごと、
そっとかみしめる。
それから、静かに一口。
慌ただしい一日が始まる前の、
自分を取り戻すための、
大切で贅沢な余白。
おしまい。