白湯のぼやき|ぼくを温めてくれた手

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ぼくは、透明で、無味無臭で、
なんの飾りもない。

冬のコンビニのホットコーナー。

橙色のライトに照らされたこの温かい棚の中は、
ぼくにとって少し居心地が悪い場所だ。

「おいおい、お前、
ただ水を温めただけだろ?」

「甘さも香りもないなんて、
味気ないわねぇ」

「水にもお湯にもなりきれない中途半端なやつ」

隣に並ぶ人気が高いBOSSや、
お洒落番長のロイヤルミルクティー、
鮮やかなほっとレモンたちから、
毎日そんな言葉が飛んでくる。

ぼくは何も言い返せなくて、
ただ体をすこし縮こませ、
棚のいちばん隅っこで小さくなっていた。

ぼくなんて、
わざわざここでお金を払って
買ってもらえる価値があるんだろうか。

そのときだった。

軽快な音楽とともに自動ドアが開いて、
冷たい風とひとりの人間が駆け込んできた。

かじかんだ手をさすりながら、
まっすぐにホットコーナーへ向かってくる。

ああ、きっと濃厚なココアか、
温かいお茶を買うんだ……

ぼくがそっと目を伏せた瞬間、
その手が迷いなく、
隅っこにいたぼくの首元を掴んだ。

「え、待って、コンビニで白湯売ってるの
神すぎるんだけど!?」

レジに向かう道中、
その人はぼくを両手で包み込むようにして、
心底嬉しそうに呟いた。

「冷たい水は売ってても、
温かいお湯って外じゃ買えないから
本当に助かる〜!」

周囲の豪華な飲み物たちが、
一瞬でシ〜ンと静まり返る気配がした。

そっか。
ぼくは、何もないぼくのままで、
誰かの救いになれていたんだ。

じんわりと伝わってくる
人間の手のひらのぬくもりに、
ぼくはそっと身を寄せた。

今日も白湯は、
ホットコーナーの隅っこに並びながら、
誰かの手のひらに包まれるのを待っている。