ウィルキンソンのぼやき|俺は泣いていない、強炭酸なだけだ

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6本パックで買われてきたあの日、
俺たちは間違いなくこの家の「主役」だった。

兄貴たちは早々に冷蔵庫へと召集され、
心地よい──プシュッ──という音とともに、
主の喉を潤していった。

そして、最後に残された俺。

5本目の兄貴が旅立ち、
ついに「その時」が来たと、
俺は全身の気泡をたぎらせて待っていた。

──だが、運命の日は来なかった。

ある日、玄関から重々しい足音が響き、
大きな段ボールが運び込まれてきた。

中にいたのは、
パステルカラーのお洒落な帯をまとった
フレーバー炭酸水たち。

「最近流行ってるし買ってみたけど、
まあ、やっぱ最終的には
ウィルキンソンに戻ると思うんだよね」

段ボールを開けながら、
主は確かにそう言っていた。

だから俺は信じていた。
背中を伝う冷や汗は、ただの結露だからな!

しかし、主の手が伸びるのは
いつだってあの段ボールばかり。

「案外、クセになるな……」

そう言って笑う主の視線の先に、
俺はいない。

6本パックの赤い紙スリーブを
首からぶら下げたまま、
俺は部屋のすみっこで、
ただ時間が過ぎるのを眺めていた。

やがてフレーバー炭酸水の2箱目が届き、
俺の寿命(賞味期限)が、
静かにカウントダウンを始める。

ある日、カサッと
段ボールが片付けられる音がした。

けどどうせ、俺じゃない。

隣に寄り添う綿ぼこりを相棒に、
半ば諦めて目をつむっていた。

そのとき、
ぬくもりのある手が、
俺の首根っこを掴んだ。

一気に視界がひらけ、
グッと帽子が捻られる。

──プシュッ!!!

弾ける泡。
喉へとなだれ込む、容赦のない刺激。

「ふぅ……あー、やっぱ
最終的にはウィルキンソンだな!」

俺は泣いてなんかいない!

ただ、ありったけの強炭酸を、
あいつの喉奥に届けてやっただけだ。

今日もウィルキンソンは、
空になったボトルで逆立ちしながら、
誇らしげに乾くのを待っている。