この話は、
朝になっても、
なぜか手元に残っている存在のぼやきです。
触り心地は、意志より先に動きます。
毛布のぼやき「引き寄せたのは、あいつだろ」
俺は、
上にいる。
羽毛布団の上。
最後に触れられる場所だ。
特別なことは、
していない。
軽くて、
やわらかくて、
冷たくない。
そういう素材で、
そういう厚みで、
ここにあるだけだ。
寝ているあいだに、
手が動く。
俺が引き寄せたわけじゃない。
引き寄せられただけだ。
意識は、
たぶん、
そこにはない。
それでも、
指は、
ちゃんと仕事をする。
下は、
もう十分に温かい。
俺は、
それを逃がさない。
温もりを増やすというより、
完成させている感覚に近い。
起こさないつもりは、
ない。
ただ、
今はこのままでいいと、
思っているだけだ。
朝は、
無理に連れてこなくても、
そのうち来る。
急がせる理由が、
見当たらない。
今日も毛布は、
手につかまれながら、
自然と目覚めるのを待っている。