前回の#68 脳内の自動アラームでは、
職場のピリついた空気や
誰かの困惑を検知した瞬間、
脳内でアラームが自動発火して、
身体が勝手に動いてしまう
「自動同調モード」の仕組みについて
お話ししました。
「気づいたら、また私が動いて
帳尻を合わせていた……」
そんな日々を繰り返していると、
ふと、ある不思議なことに気がつきます。
なぜか、「名もなき雑務」や、
「人間関係のちょっとした摩擦の調整」のような、
誰も手をつけたがらない面倒な仕事ばかりが、
まるで磁石のように
自分のもとに集まってきてはいませんか。
「私って、
貧乏くじを引きやすい体質なのかな?」
「要領よく立ち回れない私が悪いのかな……」
そうやって、
真面目な人ほど自分を責めてしまいがちですが、
これもあなたの性格のせいではありません。
今回は、私のような
「物事をスムーズに終わらせたい(効率主義)」
という性質を持つタイプが、
いかにして職場の「ブラックホール」に
吸い寄せられてしまうのか、
その仕組みについてお話ししていきます。
職場に必ず存在する「名もなき隙間」
どんなに綺麗に
マニュアルが整えられた職場であっても、
人と人とが一緒に働く以上、
そこには必ず「隙間」が生まれます。
誰の担当でもないけれど、
やっておかないと地味にみんなが困る雑務。
言葉には出さないけれど、
なんとなく現場に漂うギクシャクした空気。
こうした、マニュアル化されていない
「名もなきタスクや摩擦」のことを、
私は職場の「ブラックホール」と呼んでいます。
世の中には、
このブラックホールが見えていても、
「まあ、自分の仕事じゃないし」
「誰かがそのうちやるでしょ」と、
上手にスルーして
自分の境界線を守れる人もたくさんいます。
ある意味、
とても省エネで世渡りが上手なんですよね。
でも、共感体質で、
なおかつ「物事をサクサク進めたい」
というタイプはそうはいきません。
センサーのせいで、
そのブラックホールが発している
「ダラダラした不穏な空気」を、
誰よりも強く、
真っ先に吸い込んでしまうのです。
「物事をスムーズに進めたい」という性質が仇になる
ここで、私の内側にある、
ある性質が動き出します。
それは、
「物事をできるだけ滞りなく、円滑に進めたい」
という気持ちです。
私は、現場がもたついたり、
非効率なやり方で立ち往生している状態を
じっと見ているのが、心底苦手です。
なぜなら、その「滞り」自体が、
私の脳のメモリをじわじわと圧迫して、
見ていてストレスになるからです。
すると、頭の中で、こんな計算が始まります。
「あそこで新人が
手順に迷ってウロウロしているな」
「このまま放っておくと、
全体の流れが遅くなって、
後でもっと面倒なことになるな」
「だったら、私が今ここで、
手を貸した方が全体として一番早いよね」
そうして、
全体の流れを良くするために、
自分のリソースをちょっとだけ差し出す。
それ自体はとても素敵な能力なのですが、
組織というシステムの中では、
これが悲しいトラップになってしまいます。
誰も触ろうとしない
ブラックホールの手前に、
全体をスムーズに回したい私の性質が通りかかる。
すると、
そのもやもやした空気に耐えかねて、
吸い寄せられるように、
自らその役割を回収しにいってしまうのです。
あなたの「気づいて、動ける力」があるからこそ
「また余計な仕事を抱えちゃったな」
と落ち込んだときは、
どうかこの構造を思い出してください。
ブラックホールに吸い込まれてしまうのは、
あなたがダメだからではありません。
むしろ逆で、
「周りの状況がよく見えていて、
どうすればスムーズに回るかの答えに、
人より早く気づいて動けてしまう力」
があるからです。
現場の滞りに気づき、
誠実に対応しようとするからこそ、
職場ののブラックホールの重力に
うっかり捕まってしまうのですね。
でも、私の本当のゴールは、
職場のエラー修正マシンになることではなく、
「ただ平穏に生きたい」ということ。
せっかくの処理能力を、
職場のブラックホールの
穴埋めのためだけに使い果たしてしまうのは、
あまりにももったいないです。
組織の構造上、
どうしても生まれてしまう名もなき隙間。
まずは、
「あ、あそこにブラックホールがあるな。
私の『サクサク進めたいセンサー』が
過剰に反応してるな」と、
一歩引いて気づくだけで十分です。
今日も職場の隙間を先回りして
穴埋めしようと頑張ってくれたあなたの心に、
温かいお茶を淹れてあげるような気持ちで、
ゆっくり休ませてあげてくださいね。
次回は、#70 器用貧乏の自滅ループ
〜 「こなせる器用さ」が招く罠
をお届けします。
私の性質が
周囲からどのように扱われ、
さらなる過負荷を生み出していくのか……
という、器用貧乏の自滅ループについて、
さらに深く潜っていきたいと思います。