世の中の共感体質(HSP)に関する本を開くと、
よくこんな言葉を目にします。
「共感体質な人は、優しくて思いやりがある」
「他人の痛みがわかる、感受性豊かな人」
こういう温かい言葉をもらうたびに、
私はありがたいなと思う反面、
どこか心の片隅で、
少しだけ居心地の悪さを感じます。
「みんなが思ってくれているほど、
純粋な優しさだけで動けているわけじゃない」と
なんだか申し訳ないような、
冷めたような気持ちになっていたのです。
だって、私の本音はいつだって
ただ平穏に、省エネで、静かに生きたいだけ。
それなのに、
気がつくと職場で誰かのお世話係や、
名もなき調整役のような過酷な役割を、
自ら引き受けてしまっている。
なぜ、平穏に生きたいはずが、
知らず知らずのうちに
自分を消耗させる行動をとってしまうのか。
今回は、
私の裏で静かに働いている
「脳内の自動アラーム」について、
ひも解いてみたいと思います。
優しいから動くのではない。「アラーム」を止めたいだけ
結論から言うと、
職場で誰かの不穏な空気を察して先回りしたり、
困っている新人に
そっと手を差し伸べたりするのは、
いわゆる「優しさ」や「親切心」だけが
理由ではありません。
あれは、私の脳内で鳴り響く
「不快なアラームを消すための、
心の防衛システム」だと思うのです。
共感体質の脳は、
現場の「仕事の滞り」や
「誰かの焦り」、
「なんとなくピリついた空気」
といったノイズを、
まるで高性能なセンサーのように、
瞬時にキャッチしてしまいます。
他の人なら
「誰かがやるでしょ」
と気にせずスルーできる微弱な電波を、
私の脳は「大変だ!」と、
自動的に大アラームとして鳴らしてしまいます。
このアラームが鳴り響いている間、
私の心の中は、
他人の感情や状況とシンクロしてしまって、
ものすごく落ち着かない状態になります。
だから、私は動きます。
それは「いい人だから」というよりも、
「私の脳内で鳴り響いている
この不快なアラーム(ノイズ)を、
一刻も早く消し去って、
心の中をいつもの状態に戻したいから」。
そうなると、身体が勝手に
「自動同調モード」のスイッチを入れて、
現場の帳尻を合わせにいってしまうのです。
私はただ「未完了タスク」をスッキリさせたいだけ
この自動アラームが鳴っているとき、
私の頭の中は、実はとても静かで、
ある意味では淡々としています。
「未完了タスク」を
とにかく「完了」させたい。
ただそれだけなんです。
「あ、この仕事がここで止まっているな」
「このままにしておくと、全体の流れが滞って、
後でもっと大変なことになるな」
そうやって、
未来のエラーを先回りして予測し、
目の前の「未完了のタスク」を片付けて、
自分の心の管理画面を
「完了(スッキリ)」にしたいだけ。
自分の平穏を守るための、
純粋なクリーンアップ作業なのです。
ところが、
ここにちょっと悲しい
「周囲とのミスマッチ」が生まれます。
私は必死に脳をフル稼働させて、
なんとかその場を丸く収めています。
しかし、
表に出す言葉遣いや態度はいつも通りなため、
周囲からはこう見えてしまうのです。
「つむぎって、いつも余裕があって凄いよね」
私は残業して、
仕事を家に持ち帰って、
こんなにも必死でやっているのに
「やり遂げた」というだけで
「余裕でこなしている」と受け取られてしまう。
この認知のズレが、
本当に切ないところだなと感じます。
自分の「仕組み」をそっと見つめる
こうして
「アラームを止めたいから片付ける」を
ただ繰り返していくうちに、
周囲からは「あの人に任せれば問題ない」という
便利な役割をいつの間にか押し付けられ、
さらにタスクが集中してしまう……
という自滅ループに、
迷い込んでしまいがちです。
そうしていつも、疲労困憊。
ここで心に留めておきたいのは、
「私の要領が悪いから、こんなに疲れるんだ」と、
自分を責めないことです。
あなたが疲弊してしまうのは、
性格が弱いからでも、
頑張りが足りないからでもありません。
「センサーが周りのノイズを検知する」
↓
「脳内アラームが鳴る」
↓
「身体が自動で動いてしまう」
という、
一生懸命に生きているからこそ起きてしまう、
システム上のすれ違いにすぎません。
まずは、
「あ、また勝手にアラームが鳴って、
私を動かそうとしてるな」と、
一歩引いた視点で
自分の心をそっと眺めてみてください。
この自動アラームの仕組みが分かれば、
「じゃあ、どうやって
そのアラームの音量を小さくしていこうか」と
これからの実践に進むことができます。
これからは、日々頑張って
アラームを止めようとしてくれている
自分の脳と身体に、
「毎日お疲れ様」と声をかけることから、
始めてみませんか。
次回は、
#69 組織のブラックホール
〜「効率主義」の性質が、名もなき隙間に吸い寄せられる怪
をお届けします。
いつのまにか「雑務」や、
「ちょっとした調整役」など、
面倒な仕事ばかりが、まるで磁石のように
自分のもとに集まってくる怪奇現象を
紐解きます。