前回の#74では、
私たちが職場で抱えるイライラの仕組みを
「感情の2階建て構造」
という視点から解剖しました。
自分の内側にある「期待」に気づくことが、
モヤモヤから抜け出す
第一歩というお話でしたね。
今回は、共感体質がにやりがちな、
もう一つの感情の消耗についてお話しします。
それが、
「深読み」と「代理恐怖」という脳内バグです。
相手はもう帰宅して
お酒でも飲んでのんびりしている時間なのに、
私はひとり夜通し
「シミュレーション」という名の幻影と戦って
ボロボロになってしまう……。
真面目な人ほど、
この終わりのない脳内戦場に
孤独で迷い込んでしまいがちです。
今でこそ気分でキレる上司を前にしても
凪のままでいられる私ですが、
20代の頃はまさにこのバグの奴隷でした。
今回は、
私の当時の黒歴史を交えながら、
このセンサーが暴走する構造を紐解いていきます。
バグその1:「他人の言葉の裏の裏」を3Dスキャンする深読みループ
まず一つ目のバグが、
相手の一言やちょっとした態度から、
脳が勝手に
裏の裏まで深読みしてしまう現象です。
職場で誰かとすれ違ったときの、
ほんの少し冷たく感じた
「お疲れ様」の一言。
それだけで、私の脳内アラームは
最大音量で鳴り響いていました。
「あのときの私の言葉選び、まずかったかな?」
「もしかして、何か地雷を踏んだ……?」
そこから、
脳のメモリをフル稼働させた
「エンドレス思考」が始まります。
周りの人間関係のパワーバランスを
過剰なほど観察し、
「どうやったらこの職場で嫌われないか」
「どうしたら上手く溶け込めるか」
「今、私に求められている立ち位置は何か」
など、
常に逆算して自分を演じ分けていました。
当時の私の防衛策は、
今思うと狂気の沙汰です。
部署内で重要ポストを占めている、
いわゆる「派閥のトップの先輩方」との会話は、
一言一句忘れないように
スマホのメモに詳細を記録。
家に帰ってから「次回の会話のために」と、
先輩たちの趣味や好みを
徹底的に調べ上げていました。
さらに、先輩方の誕生日や
何気ない記念日すらも
自分のカレンダーにすべて登録し、
その日が来たら
「おめでとうございます!」
と必ず連絡を入れていたのです。
今の私が振り返ってツッコミを入れるなら、
完全にこれです。
「何か超高額な商品を売り込みたい
セールスマンかよ(笑)」
相手に嫌われたら、
職場で居場所を失って死んでしまう。
そんな強烈な生存本能が、
私の分析グセを
「過剰同調」と「過剰接待」という方向へ
おおいに誤作動させていた、
恥ずかしくも恐ろしいバグの記録です。
バグその2:自分は微塵も悪くないのにビビり倒す「代理恐怖」
二つ目のバグが、
他人が怒られている空気感を吸い込んで
自分まで恐怖のどん底に落ちる
「代理恐怖」です。
これは、幼い頃からのデフォルトでした。
学校の教室で、
私は一度も怒られたことがないような
静かな子供でした。
しかし、
先生がやんちゃな生徒を怒鳴る声や、
その怒りに満ちた顔を見るだけで、
自分の心臓がバクバクと
破裂しそうになっていたのを覚えています。
自分が怒られているわけではないのに、
その空間に漂う
「怒りのエネルギー」に同調してしまい、
無駄にビビり倒していたのです。
この厄介なチキンハートは、
20代後半くらいまで顕著に健在でした。
学生の頃なら、怖い先生や不機嫌な同級生とは
「関わらないように逃げる」
という選択ができました。
しかし、社会人になるとそうはいきません。
理不尽に感情を爆発させる人や、
常に不機嫌を撒き散らしている「怖い対象」でも、
仕事として
正面から対峙せざるを得ない瞬間がやってきます。
そんな人と明日会わなければいけない、
となった前日の夜は最悪でした。
「なるべく地雷を踏まないように」と、
明日の会話のシミュレーションを
想定しうる限り何パターンも繰り返し、
緊張で眠れない夜を過ごしました。
さらに共感体質の脳は、
恐ろしいほど先回りをします。
もし私がビビり倒していることを
相手に悟られたら、それはそれで
「なめてんのか」
「オドオドするな」と、
新たなキレポイントになる可能性がある
と深読みしてしまいます。
そこまで分かっているからこそ、
当日は「普通に見えるようにどう受け答えするか」
という、完璧な演技プランまで細かく計算し、
現場に挑んでいました。
相手と関わる前から、
脳のバッテリーはすでに空っぽだったのです。
この暴走センサーを、どうやって「無効化」したのか?
- 他人の一言を数日先まで深読みして、
布団の中で一人でボロボロになる - 怒っている人の声を聞くだけで、
恐怖と罪悪感に襲われる
もし、今まさにこの渦中で苦しんでいる人がいたら、
まずは声を大にして伝えたいです。
あなたは1ミリも悪くないし、
決して心が狭いわけでも、
器が小さいわけでもありません。
ただ、
人よりも少しだけ「感度が高いセンサー」を
脳に積んで生まれてきてしまった、
それだけのことなのです。
かつて私は、
重要ポストの先輩に媚びを売る
「セールスマン」であり、
前日の夜から演技プランを練って
心底ビビり倒していたチキンハートでした。
しかし今では、
感情を爆発させる人を前にしても、
心拍数ひとつ乱さずに
「凪」のままでいられます。
それは、自分のこの
「暴走しがちなセンサーの仕様」を認め、
他人の感情を自分の脳内メモリから強制排除する
「ある具体的な身体的ライフハック」を
身につけたからです。
#76、#77では、
この過剰な脳内自動分析を強制終了させ、
目の前のノイズに対して
「心のシャッター」をパタンと閉めるための、
実践的な防衛術をお話ししていきます。
もう、夜の布団の中で、
他人ために
自分の大切なエネルギーを
1ミリも使わなくていいように。
一緒に少しずつ、
省エネモードの切り替えを練習していきませんか?
私も日々練習中です。
次回、
#76 感情の解剖③ | 他人の感情爆発に引き起こされる脳内自動分析グセ
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