前回、苦手な相手に対して
感情の「期待の損切り」を行い、
感情を消した事務的な対応に切り替えた結果、
皮肉にも相手にとっての
「快適な沼」が完成してしまう……
というミスマッチのお話をしました。
ここで一つ、当然の疑問が湧いてきます。
「損切りしたなら、
もっと冷たい態度を取ればいいのでは?」
「挨拶を無視するとか、
あからさまに嫌な顔をすれば
相手も離れていくはずなのに、
私は、なぜそれができないのか?」
冷酷になりきれず、
どうしても「外面の良さ」が発動してしまう。
実はこれ、
私たちの性格が甘いからでも、
八方美人だからでもありません。
私たちの脳内システムが、
自分を守るために
ある強固なマスクを被っているからなのです。
「気まずい空気」を吸わないための、防護マスク
共感体質にとって、
「不穏な空気」や「相手の負の感情」は、
有害なガスと同じくらい耐えがたいものです。
もし、あからさまに冷たく接したり、
突き放したりしたらどうなるか。
その場に流れる「険悪なムード」や、
相手が放つ「えっ、ショック……」
という負のエネルギーを、
センサーが敏感に吸い込んで、
心のバッテリーがすり減ってしまうのです。
つまり、私たちが職場で被っている
「柔らかな外面(微笑みやおだやかな対応)」は、
相手のためではなく、
自分を守るためのものなのです。
自分が不穏な空気を吸い込まないための、
「防護マスク」なのです。
イメージするなら、
ダース・ベイダーのあのマスクです。
外の世界が
どれだけ有害なガス(気まずい空気)で
満ちていようとも、
自分はあのマスクを被って
「シューコー、シューコー」と
完全に遮断された安全な空間で、
冷徹に、淡々と、自分の呼吸を保っている。
内面は、
感情の通わないきわめて無機質な状態。
ただその場を、平和にサバイブしたい!
そのための「最適解」として、
「ここは笑顔でマニュアルを渡して、
作業ロボットとして動いてもらうのが
一番ノーダメージ」と
はじき出しているだけなのです。
相手が愛しているのは、あなたの「マスク」である
ここに、
このミステリーの切ない答えがあります。
苦手な人があなたにやたらと懐いているとき、
相手はあなたの「人格」や「本心」を
愛しているのではありません。
あなたが自分を守るために必死に稼働させている
「防護マスク
(エラーのない快適な環境)」に
依存しているだけなのです。
相手から見れば、そのマスクは
「何を言っても否定せず、
自分のやらかしを笑顔で回収してくれる、
この上なく優しい聖母」に見えています。
しかしその実態は、
あなたが有害物質を遮断するために装着した、
無機質な防具。
お互いの見ている景色が
ここまでズレていれば、
そりゃあ訳のわからないループから
抜け出せなくなるわけです。
つまり、
私たちは自ら「快適な沼」を掘っていた。
では、自動で楽園を作ってしまう
この脳のシステムを、
どうやって手なずければいいのでしょうか?
次回、最終回。
相手からの好意を無理に跳ね返さず、
無意識に提供してしまっている
「安全地帯という機能」だけを
そっと閉鎖する、
具体的な【運用編】へ続きます。