この話は、
長く同じ家にいながら、
季節によって距離を変えられる存在のぼやきです。
忘れられても、
季節の順番だけは、
ちゃんと覚えております。
冬枯れのベランダ植物のぼやき日記「季節の移ろいとともに、思い出されるものでございます」
わたしがこの家に来たのは、
お嬢様がお生まれになるより、
ずっと前のことでございます。
ベランダの隅で、
何度も夏と冬を見送りながら、
この家の移ろいを、
静かに眺めてまいりました。
夏のあいだは、
なかなか賑やかでして。
水をかけていただき、
「今日も元気だね」と、
声をかけられることもありました。
写真を撮られ、
癒やしだ何だと、
随分と持ち上げていただいたものです。
ですが、
冬になりますと、
話は変わります。
葉が落ち、
枝ばかりになりますと、
窓はあまり開かれなくなりました。
水も控えめになり、
視線も、
こちらまで届かなくなります。
室内には、
若い観葉植物がおります。
暖かな空気の中で、
定期的に水をもらい、
霧吹きまでかけてもらっているようです。
カフェオレを片手に、
語りかけられている姿も、
窓越しに、よく見えます。
あれは、
あれで結構なことでございます。
わたしが枯れたわけではなく、
休んでいるだけだということも、
お嬢様はもうお忘れのようでございますな。
冬というものは、
そういう時期です。
葉を落とし、
力を溜め、
次の季節に備える。
わたしどもは、
そうやって、
長く生きてまいりました。
春は、
必ず参ります。
ですから、
焦ることは、
ございません。
今日もベランダ植物は、
窓の外で季節を数えながら、
次に呼ばれる日を待っている。